甘い夏  煙草の匂い



「俺んちはまだいいさ、オートロックだしな。

だけど真那んちは、いつ襲われてもおかしくないだろ?」

「戸締りさえキチンとしていれば、問題ないんじゃね?」

新しいビールを呑みながら、今度は料理を物色しながら質問を投げ掛ける栄四郎。


「…ボクの悩みは、キミにとって片手間ですか?」

「いやいや、今年一番のマジ話ですよ?…あ“チーズししゃも”ってウマイかな?」

「…誰だ?コイツ誘ったの。」



…あ、俺だ。



「なぁ、真剣な話どう思うよ?」


栄四郎は捨てて、進也に向き直る。


「“チーズししゃも”より“トマトほっけ”が気になる…。」

「両方いっとく?」

「いいね。ピンポン押して?」

「あ、ついでにビールも。」

「マジで?ピッチ速くね?」

「仕事の後はウマイんだよ。あ、注文お願いしま~す。」





…コイツら…。






久しぶりの真剣な想いを、誰よりも身近なコイツらにわかってもらおうなんて…甘かったのか?


10年の付き合いって…こんなもんか?






< 69 / 206 >

この作品をシェア

pagetop