甘い夏 煙草の匂い
「俺んちはまだいいさ、オートロックだしな。
だけど真那んちは、いつ襲われてもおかしくないだろ?」
「戸締りさえキチンとしていれば、問題ないんじゃね?」
新しいビールを呑みながら、今度は料理を物色しながら質問を投げ掛ける栄四郎。
「…ボクの悩みは、キミにとって片手間ですか?」
「いやいや、今年一番のマジ話ですよ?…あ“チーズししゃも”ってウマイかな?」
「…誰だ?コイツ誘ったの。」
…あ、俺だ。
「なぁ、真剣な話どう思うよ?」
栄四郎は捨てて、進也に向き直る。
「“チーズししゃも”より“トマトほっけ”が気になる…。」
「両方いっとく?」
「いいね。ピンポン押して?」
「あ、ついでにビールも。」
「マジで?ピッチ速くね?」
「仕事の後はウマイんだよ。あ、注文お願いしま~す。」
…コイツら…。
久しぶりの真剣な想いを、誰よりも身近なコイツらにわかってもらおうなんて…甘かったのか?
10年の付き合いって…こんなもんか?