甘い夏 煙草の匂い
次々に注文していく栄四郎。
「…あと、生中を…」「5コ。」
「「…は?」」
「いいから、5コぐらい持ってきて。
…これで、じっくり俺の話が聞けるだろ?」
オタオタしている店員に「…んじゃ、とりあえずそれで。」と、空気を読む進也。
「…っつーか、聞いてるよ?聞いてるけど…今のお前、一人相撲じゃん?」
呆れながら、グイッとジョッキを空にする栄四郎。
コイツは煙草を吸わない変わりに、誰よりもビールをこよなく愛する。
その隣で、溜め息をつくように煙草を吸う進也。
その仕草が、時にゾクゾクするほど色っぽく見える。
「…わかってるよ。でも、一人相撲で終わらせたくないから…こう…」
「こう?」
「その…」
「その?」
「まぁ…アドバイス…ちゅうか…うん…
…どうしたら、いいかな?」
なかなか本題に切り出せず、おしぼりをモジモジといじりながら反応を待つ。
…笑われるか?それとも呆れられるか?
すると「待て!」という進也の声が聞こえたので、驚いて顔を上げた。