甘い夏  煙草の匂い



ふと見上げると、般若が…いやいや、栄四郎が空のジョッキを俺めがけて振り降ろそうとしていた。


「ま…待て!」

座ったまま後ずさりする。


「なぁにが『ボク、アドバイスがほしいの。』だぁ?てめぇは何歳だ?!」

「…26になりました。栄四郎さんと一緒です。」

「…ったく、オリコン入りする曲を書く野郎だとは思えねぇな!

そんな話する為に来たんじゃねぇ!」


「まぁまぁ」となだめながら、ジョッキを放させる進也。…助かった。


ちょうどよく運ばれてきた生中5コを、全部自分の前に置き、次々と呑み始めた。


「…迷ってんのか?」

「何が?」

「その10コ下の子の事。迷ってんだったら、今すぐやめちまえ。」


他人に干渉するような事を言う栄四郎に、進也と俺は驚いて顔を見合わせた。


「女なんて、他にいくらでもいるだろ?龍太なんて、女の方から寄ってくんだろ。そん中から選べばいいんじゃね?」

そう言いながら、チーズししゃもを指で摘まんで食べ始める。


「…他の女ってなんだよ?アイツじゃなきゃイヤなんだよ…。」

俺もつられて、チーズししゃもを摘まんだ。




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