甘い夏  煙草の匂い



ガラッと勢いよく襖が開き、トイレから戻って来るなり…


「わり。もうちょいしたら出るわ。」

「え?どうした?」

「…お前の話し聞いてたら、女に逢いたくなった。」



栄四郎の彼女は中学の同級生。一年前のクラス会で再会し、3ヶ月前に付き合い始めたばかりだった。



「リエコちゃんだっけ?元気?」

「あぁ…さっきメールしたら、仕事終わったトコだってさ。」

「ふぅん…やっぱ、押しまくったの?」

「押し…倒しちゃった?」

「…。」

「…龍太はやるなよ。犯罪になる。」


…重々承知しております。



残りのジョッキも空にし「ごちそうさん」と言って一万円札をテーブルに置く。


「今日は奢る」と言っても「その女をモノにしたら、焼肉奢れ」と言って帰ってしまった。



「俺も…真那に逢いたいな。」

「昨日、逢ったろ?」

「今日は逢ってない。」

「…俺らも帰るか?」


残りのビールをグイッと飲み干して、帰り支度をする進也。


「進也。」

「ん?」

「それ、どうすんの?」


一口つつかれたまま、放置された“トマトほっけ”



「…ごちそうさまでした?」




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