甘い夏 煙草の匂い
「どうしてるかなって思ってさ…。
この時間って、いつも起きてんの?」
勝手に電話しておいて、こんな会話しか見つからない自分に腹がたつ…。
「いぇ…ちょっと…眠れなくて…。」
声のトーンが少しずつ小さくなっていく。
「どうした?暑くて寝らんない?」
「ん…そういうワケじゃないけど…。」
フイに出た軽いタメ語に、口元が緩む。
しかし、すぐに嫌な予感がした。
「もしかして…何か変な事があったか?」
「え?変な…事?」
…まだ何もなさそうだ。
「なぁ、大事な話があるんだけど、これから行ってもいい?」
何の為に、電話があるんだろう?
「えぇ?今…からですか?」
「うん。」
「えっと…うんと…」と、一人でアタフタしている様子だ。おそらく、イヤではないだろう。
「5分で着く。」
「5分?!待って下さい!着替えます!」
「なんで?」
「だって…パジャマだし…」
…なんでコイツは、こんなに煽るのが上手いんだろう…。
「んじゃ、7分で行くから。じゃあね。」
そう言って、一方的に電話を切った。