甘い夏  煙草の匂い



「どうしてるかなって思ってさ…。

この時間って、いつも起きてんの?」


勝手に電話しておいて、こんな会話しか見つからない自分に腹がたつ…。


「いぇ…ちょっと…眠れなくて…。」


声のトーンが少しずつ小さくなっていく。



「どうした?暑くて寝らんない?」

「ん…そういうワケじゃないけど…。」



フイに出た軽いタメ語に、口元が緩む。


しかし、すぐに嫌な予感がした。



「もしかして…何か変な事があったか?」

「え?変な…事?」


…まだ何もなさそうだ。


「なぁ、大事な話があるんだけど、これから行ってもいい?」


何の為に、電話があるんだろう?


「えぇ?今…からですか?」

「うん。」


「えっと…うんと…」と、一人でアタフタしている様子だ。おそらく、イヤではないだろう。


「5分で着く。」

「5分?!待って下さい!着替えます!」

「なんで?」

「だって…パジャマだし…」



…なんでコイツは、こんなに煽るのが上手いんだろう…。



「んじゃ、7分で行くから。じゃあね。」



そう言って、一方的に電話を切った。




< 75 / 206 >

この作品をシェア

pagetop