甘い夏  煙草の匂い



『えぇ~?もう帰らなきゃダメぇ?』

『…、…。』


会話の相手は男らしいが、話してる内容はよく聞き取れない。



『や~あ~。ん~…もう一回シタいぃ~。』

『…。』


なんだ…隣はヤッてたのか。


『ん~…わかったぁ。じゃあ、キスしてぇ?』


…ウゼぇ。ブチュっとやって、とっとと帰せ。


ふと真那の方を見ると、部屋の隅で丸くなって、扇風機に当たっていた。


『んっ…あふっ…』


…なんだ?


『ん…ダメぇ…こんなトコじゃ…あぁん』


…オイオイ、玄関先でナニやってんだ?

もう一度、真那を見ると、あまり気にしていない様子。


と言うか、聞かないフリ…?



…ははぁん、コイツが原因か。



『んもぅ…フフッ、またねぇ。』



コツコツ…とヒールの音が通り過ぎると、車のエンジンがかかった。

やっぱり、赤い外車の持ち主か。



「真那?帰ったぞ。」

「あ…ハイ。」


バツが悪そうに、ゆっくりと振り向く。


「もう窓開けていいんじゃね?」

「そうですね…」


…やっぱりそうか。




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