甘い夏  煙草の匂い



「なぁ、隣、しょっちゅうなの?」


おそらく壁が薄いだろうと思い、少し小声で話してみる。


「しょっちゅう…なんですかね?」


疲れきった顔の真那。


窓は開けたが、熱気に包まれた部屋はすぐには冷めない。


「なぁ、明日は仕事?」

「え?ハイ…。」

「何時から?」

「えと…午後からです。午前の約束がキャンセルになったので。」


…チャンス。



「なぁ、ちょっと車見て欲しいんだけど。」

「車…ですか?」

「うん。助手席側に、キズがついてるんだよね?」

「…えぇ?」


顔が一瞬、曇る。


「うん…前はなかったんだけどなぁ…。」


明らかに「私?」と言う顔をしている…。



「ホラ、早く。」

「あ、はい!」


急いで玄関に行く真那。


「あ、念の為に窓閉めて?」

「ハイ!」

「あと、鍵も持って。」

「ハイ!」

「電気消して?節約節約。」

「ハイ!」

「んじゃ、鍵閉めて?」

「ハイ!」



気が動転しているのか、全て言いなり。





…くぅ、笑える…





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