甘い夏 煙草の匂い
「助手席側のフロントガラスなんだけど、中から見てもらえる?」
「あ、はい!」
そう言って助手席に乗らせ、俺は運転席に乗り込む。
「虫、入るから、ドア閉めて。」
「ハイ!」
何の疑いもなく、バタンと閉めた。
…よし、確保!
素早くドアロックし、エンジンをかける。
すぐに車を動かすと、反動で真那の頭がフロントガラスにぶつかった。
「痛っ!」
「あ、わり。」
何が起きたのか分からない様子で、キョロキョロと周りを見渡している。
「…っくっくっ…」
堪えていた笑いが、溢れてきた。
「…え?」
まだ、理解できていない真那。目を大きく見開いて、じっと俺を見ている。
「…可愛いなぁ、ホント。」
ようやく、からかわれている事に気付き、より一層目を大きく見開いた。
「…えええぇ?!」
こんな真那だから、不安になるんだ。
俺が守ってやらないで、誰が守るんだ?
「お…降ろして下さい!」
「やだね。」
「ん…もうっ!」
必死でドアロックを探すが、車に不慣れな真那は見つからない。