甘い夏  煙草の匂い



「どうした?」

「ここ…」


うっすらと見える小学校の校舎を、大きく目を見開いて見つめていた。


「あぁ…俺の…」
「私の母校です!」

「…は?」


俺の母校…と言いたかったが、先に真那に言われてしまった。


「私、小学3年生まで通っていたんですよ!ここに。父の転勤でN県に引っ越したんですけど…わぁ、懐かしい…。」


車から降りて見ようとロックを探すので、ロック解除して、2人で外に出た。


「なんで知ってるんですか?この学校。」


フェンス越しに校舎を見つめながら、聞いてくる。


「なんでって…俺もこの学校出身だから…。」

「えっ?」

「小さい頃はこの辺に住んでたんだ。」


俺も校舎を見つめる。あの時と何も変わっていないのが嬉しく思う。


「そうだったんですか?じゃあ、親御さんはこの近くに?」

「いや。中学の時に親が離婚して、母親に付いてK県に引っ越したからな。

母親はそのままK県にいるけど、父親は連絡とってねぇから、どこにいるか知らん。」




< 94 / 206 >

この作品をシェア

pagetop