甘い夏 煙草の匂い
「どうした?」
「ここ…」
うっすらと見える小学校の校舎を、大きく目を見開いて見つめていた。
「あぁ…俺の…」
「私の母校です!」
「…は?」
俺の母校…と言いたかったが、先に真那に言われてしまった。
「私、小学3年生まで通っていたんですよ!ここに。父の転勤でN県に引っ越したんですけど…わぁ、懐かしい…。」
車から降りて見ようとロックを探すので、ロック解除して、2人で外に出た。
「なんで知ってるんですか?この学校。」
フェンス越しに校舎を見つめながら、聞いてくる。
「なんでって…俺もこの学校出身だから…。」
「えっ?」
「小さい頃はこの辺に住んでたんだ。」
俺も校舎を見つめる。あの時と何も変わっていないのが嬉しく思う。
「そうだったんですか?じゃあ、親御さんはこの近くに?」
「いや。中学の時に親が離婚して、母親に付いてK県に引っ越したからな。
母親はそのままK県にいるけど、父親は連絡とってねぇから、どこにいるか知らん。」