甘い夏 煙草の匂い
「あっ…もう、こんな時間です…帰りましょ?」
オーディオのデジタル時計が2時半を知らせていた。さっきはエンジンを切っていたから気が付かなかったが…。
ホントに、真那といると時間を忘れてしまう…。
仕方なく車を発進させ、真那のアパートに向かった。
帰りの車内で「理科室の窓の鍵は壊れたままだった」とか「調理室の壁に大きなカレーのシミがあった」なんて、小学校時代の思い出を語りながら笑いあった。
真那とは10歳も離れているが、同じ校舎で過ごしたのかと思うと、くすぐったい感じがする。
何よりも、真那が楽しそうに笑うのが…嬉しかった。
…楽しい時間は短いもので…もうアパートに着いてしまった。
「ありがとうございます。」
無理矢理、誘拐されたくせに…着くとお礼を言う真那。
しかし、ドアを開けずにモジモジしている。
「どした?」
「上杉さんは…」
小さな声で話し始める…。