甘い夏 煙草の匂い
「上杉さんは、しっかりしてます!」
…?
「上杉さんはっ…大人ですから…
いゃ、だからってワケじゃないですけど…
…とにかく、しっかりしてます!じゃ、おやすみなさいっ!」
一人で捲し立てて、逃げるように車を降りていってしまった。
カンカンカンっ…と勢いよく階段を昇り、部屋に入る姿も、まるで逃げるようだった。
…なんだったんだ?今の…。
う~ん…と考えていると、何か言いたそうだった真那の顔が浮かんだ。
…あぁ、そっか。
妹の話をした時に「俺と違ってしっかりしてて…」って言ったからか?
だから…『上杉さんはしっかりしてます!』なのか?
そっか…そっか。
後から後から笑いが込み上げてきて止まらない…。
…っとに、なんちゅう女だ。
おかげで、一番大切な事を言いそびれたじゃないか。
まだ笑いが止まらないまま、真那に電話をかけた。