あたしが眠りにつく前に
二人が一緒に帰るのは3年間続いている日課である。幼稚園と小学校では帰る方向は正反対だったが、中学校は同じ方向だった。
当時も互いに部活は無所属だったため登校も共にしていたが、現在は帰りだけだ。毎朝きっかり時間通りに起床できるとは限らなくなり寝坊しがちなため、帆高にまで遅刻させるわけにはいかない。
それにしてもよく続いていると思う。珠結にとっては勉強を教わった上に荷台に乗って楽をさせてもらってのメリット尽くしだが、帆高には何も無い。なぜ拒まないのか疑問だが、おそらくダメダメな幼馴染への哀れみや責任感だろう。世話好きの形容詞などこの男には狸に油揚げというもの。正反対であり決して結びつくことは無い。その根拠として、
「最近思うけどさ。珠結、かなり重くなったよな」
カチン 金剛石に金槌が振り下ろされたような音が頭の中でした。
「レディーに不躾な発言はやめい。中学の時より結構背伸びたんだから当然でしょが。帆高こそ朝夕自転車漕いでるのに、ちっとも体力ついてないみたいね。貧弱~」
「…誰がレディー? そっちこそ失礼極まりないな。第一、自分の立場分かってるか? 今ここで手を放したらどーなるかな」
状況として、いつの間にか大きな急傾斜の坂の頂上の一歩手前に着いていた。手なんて放されたら怪我は擦り傷程度ですまない。
「わ―! やめてやめて! あたしが悪ぅございましたぁぁ~」
帆高の制服にしがみ付くと、その背中が小刻みに震えているのが分かった。どうせサディスティックに笑っているのだ。
『卑怯者!』と叫びたくなるのを何とか堪える。さすがに十代半ばの若さで死にたくはない。 帆高は口とは裏腹に珠結の重さを気にすることなく、楽々と坂を下っていく。
「でも、帆高の方から先にケンカ売ってきたじゃんか」
坂を完全に下り終わると珠結は荷台から飛び降り、自転車の前に回り込んで仁王立ちする。
「俺は単にその場の感想言っただけ。売るつもりなんて無かったし。勝手に解釈して買ったほうが悪い」
「はぁーーー!?」
「あーもう、吠えるな。駄犬」
並んで歩きながら、しばしつまらない言い合いが続いた。大概がこの調子なのだから、二人が一緒にいても恋人同士に見られないのである。
当時も互いに部活は無所属だったため登校も共にしていたが、現在は帰りだけだ。毎朝きっかり時間通りに起床できるとは限らなくなり寝坊しがちなため、帆高にまで遅刻させるわけにはいかない。
それにしてもよく続いていると思う。珠結にとっては勉強を教わった上に荷台に乗って楽をさせてもらってのメリット尽くしだが、帆高には何も無い。なぜ拒まないのか疑問だが、おそらくダメダメな幼馴染への哀れみや責任感だろう。世話好きの形容詞などこの男には狸に油揚げというもの。正反対であり決して結びつくことは無い。その根拠として、
「最近思うけどさ。珠結、かなり重くなったよな」
カチン 金剛石に金槌が振り下ろされたような音が頭の中でした。
「レディーに不躾な発言はやめい。中学の時より結構背伸びたんだから当然でしょが。帆高こそ朝夕自転車漕いでるのに、ちっとも体力ついてないみたいね。貧弱~」
「…誰がレディー? そっちこそ失礼極まりないな。第一、自分の立場分かってるか? 今ここで手を放したらどーなるかな」
状況として、いつの間にか大きな急傾斜の坂の頂上の一歩手前に着いていた。手なんて放されたら怪我は擦り傷程度ですまない。
「わ―! やめてやめて! あたしが悪ぅございましたぁぁ~」
帆高の制服にしがみ付くと、その背中が小刻みに震えているのが分かった。どうせサディスティックに笑っているのだ。
『卑怯者!』と叫びたくなるのを何とか堪える。さすがに十代半ばの若さで死にたくはない。 帆高は口とは裏腹に珠結の重さを気にすることなく、楽々と坂を下っていく。
「でも、帆高の方から先にケンカ売ってきたじゃんか」
坂を完全に下り終わると珠結は荷台から飛び降り、自転車の前に回り込んで仁王立ちする。
「俺は単にその場の感想言っただけ。売るつもりなんて無かったし。勝手に解釈して買ったほうが悪い」
「はぁーーー!?」
「あーもう、吠えるな。駄犬」
並んで歩きながら、しばしつまらない言い合いが続いた。大概がこの調子なのだから、二人が一緒にいても恋人同士に見られないのである。