あたしが眠りにつく前に
「そうだね。一人だけ大好きな皆と離れるなんて、寂しいよね。手術だって、怖くてたまらないよね」
珠結は近づいて少女の両手を優しく握る。高さに差はそんなに無かったため、何なく手が届いた。
「あたしには手術とかの怖いことは無いんだけど、去年の夏前ぐらいからずっと入院してるんだ。あたしの家は遠くて、お母さんが着てくれてもすぐに面会終了時間になっちゃう。友達とも、なかなか会えないの。始めは寂しくて不安でたまらなかったよ。家に帰りたいって何度も思った。でも今は穏やかに入院生活を過ごせてる。…何でかってね、その人達のおかげなの」
「どうして、そうなれたの?」
「あたしがお母さんや友達が大好きなように、その人達もあたしを大好きでいてくれてるの。会うたびに笑顔でいてくれるし、帰る時は毎回『またね』って言ってくれる。あたしが帰るのを待っててくれていて、気にかけてくれている。どれだけ、遠く離れていても。だからあたしは一人じゃないんだって、明日を待ち望めたんだよ」
眠りに始終支配され、限られた短い時間の中で思うのは大切な人たちのこと。顔と声を思い出すだけで、心が満たされた。自由と時間を玩ぶ睡魔にも、思いだけは奪えない。
自分だって、かわいそうな子なんかではない。
「あなたの家族だって同じ。あなたがあれほど嬉しそうに大好きって言い切ったぐらいだから、あなたと変わらないまたはそれ以上に大好きの気持ちを込めて、あなたを支えてきたんだと思うよ。あなたが手術を頑張るのを応援して、目が良くなって笑顔でお家に帰ってくれるのを待ってくれる。あなたは間違いなく愛されてるんだから、不安にならなくたっていいんだよ」
少女の家族がどんな人なのかなんて知らない。でも、かわいそうじゃない彼女を見れば分かる。素敵な人達なんだと、賭けてもいい。
少女の手が強く握り返された。
「それとね、あなたを思ってくれてるのは家族だけじゃないよ。学校の先生だって言い方は良くなかったかも知れないけど、大人だって言葉を間違えることもあるんだ。あなたを心配して気遣う気持ちは嘘じゃないはず。それにミユちゃんとトモちゃんだっけ。特に仲が良いお友達なの?」
「うん、いつも一緒に遊んでたの。でもわたしが病気になって、男の子達からからかわれるようになったら、離れてっちゃった。わたしのこと、嫌いになっちゃんたんだよ」
「う~ん、そう思うのは早いかも。その子達、怖くなっちゃったんじゃないかな。自分達も男の子達から嫌なこと言われて、仲間はずれにされちゃうんじゃないかって。自分の気持ちを伝えて、二人の気持ちを確かめてからでも遅くないよ」
「…分かった。ミユちゃんとトモちゃんに避けられてて、寂しいって言う。わたしのことどう思ってるのって聞いてみる。それでも嫌いって言われたら、どうしよう」
今いくつかと問えば、8歳と返ってきた。珠結とは9歳違い。ならば4月から3年生になるのか。こんなに若いうちから、何と困難が多いことか。
「人生って思うよりも長くて、あっという間に過ぎてっちゃうの。今いる小学校だってあと4年したら卒業しちゃうし、広くて色んな世界が待ってる。クラスの皆とも、お別れして別々の道を歩いてく。その先で、またたくさんの人に出会うの。今辛いと思ってるこだって『あんなことも、あったなあ』って、笑って話せる日が来るよ」
珠結は近づいて少女の両手を優しく握る。高さに差はそんなに無かったため、何なく手が届いた。
「あたしには手術とかの怖いことは無いんだけど、去年の夏前ぐらいからずっと入院してるんだ。あたしの家は遠くて、お母さんが着てくれてもすぐに面会終了時間になっちゃう。友達とも、なかなか会えないの。始めは寂しくて不安でたまらなかったよ。家に帰りたいって何度も思った。でも今は穏やかに入院生活を過ごせてる。…何でかってね、その人達のおかげなの」
「どうして、そうなれたの?」
「あたしがお母さんや友達が大好きなように、その人達もあたしを大好きでいてくれてるの。会うたびに笑顔でいてくれるし、帰る時は毎回『またね』って言ってくれる。あたしが帰るのを待っててくれていて、気にかけてくれている。どれだけ、遠く離れていても。だからあたしは一人じゃないんだって、明日を待ち望めたんだよ」
眠りに始終支配され、限られた短い時間の中で思うのは大切な人たちのこと。顔と声を思い出すだけで、心が満たされた。自由と時間を玩ぶ睡魔にも、思いだけは奪えない。
自分だって、かわいそうな子なんかではない。
「あなたの家族だって同じ。あなたがあれほど嬉しそうに大好きって言い切ったぐらいだから、あなたと変わらないまたはそれ以上に大好きの気持ちを込めて、あなたを支えてきたんだと思うよ。あなたが手術を頑張るのを応援して、目が良くなって笑顔でお家に帰ってくれるのを待ってくれる。あなたは間違いなく愛されてるんだから、不安にならなくたっていいんだよ」
少女の家族がどんな人なのかなんて知らない。でも、かわいそうじゃない彼女を見れば分かる。素敵な人達なんだと、賭けてもいい。
少女の手が強く握り返された。
「それとね、あなたを思ってくれてるのは家族だけじゃないよ。学校の先生だって言い方は良くなかったかも知れないけど、大人だって言葉を間違えることもあるんだ。あなたを心配して気遣う気持ちは嘘じゃないはず。それにミユちゃんとトモちゃんだっけ。特に仲が良いお友達なの?」
「うん、いつも一緒に遊んでたの。でもわたしが病気になって、男の子達からからかわれるようになったら、離れてっちゃった。わたしのこと、嫌いになっちゃんたんだよ」
「う~ん、そう思うのは早いかも。その子達、怖くなっちゃったんじゃないかな。自分達も男の子達から嫌なこと言われて、仲間はずれにされちゃうんじゃないかって。自分の気持ちを伝えて、二人の気持ちを確かめてからでも遅くないよ」
「…分かった。ミユちゃんとトモちゃんに避けられてて、寂しいって言う。わたしのことどう思ってるのって聞いてみる。それでも嫌いって言われたら、どうしよう」
今いくつかと問えば、8歳と返ってきた。珠結とは9歳違い。ならば4月から3年生になるのか。こんなに若いうちから、何と困難が多いことか。
「人生って思うよりも長くて、あっという間に過ぎてっちゃうの。今いる小学校だってあと4年したら卒業しちゃうし、広くて色んな世界が待ってる。クラスの皆とも、お別れして別々の道を歩いてく。その先で、またたくさんの人に出会うの。今辛いと思ってるこだって『あんなことも、あったなあ』って、笑って話せる日が来るよ」