あたしが眠りにつく前に
「あ~、えっと。告白はしない。それともし向こうがす…同じ気持ちでも、付き合うことはないよ」
「え? どうして?」
「恋っていうのは思い通りになるものじゃないんだよ。漫画の中でも簡単にハッピーエンドにならないでしょ? 色々と困難があったり、すれ違って離れたり。現実も同じ。あたし達も、そうはできない難しい秘密の事情があるんでね」
少女が自分のことのように、肩を落とした。
「んと、ムズカシイヒミツノジジョウ? 無くなるといいね」
「ふふ、だといいんだけどね。…さて! そろそろ帰ろっか!!」
彼女の母親と同じく、電話が長引いていなければ帆高だって探している。帆高と別れてから、30分以上は経っている。
来た道を戻る。視力は良くなくとも少女は慣れたものでスタスタと歩き、珠結を気にかけてか少し先を進む。大きめの石がある、凸凹があると教えてくれ、非常にスムーズに進むことができた。
「そういえば、どうしてあたしに目の病気のことや学校のこと教えてくれたの? 話すの、嫌だったでしょ」
「なんとなく。おねえさんになら話してもいいかなって思ったの。わたしのこと『かわいそうじゃない』って言ってくれたのおねえさんが初めてで嬉しくて。だから、もっと聞いて欲しいなーって」
速度を緩めて珠結の横に並ぶと、少女は秘め事を囁いた。
「だからね、もう一つ話しちゃう。今日の学校ね、ママに頭が痛いって言って休んだの。でもそれ、嘘なんだ。病院に行って『どこも悪くない』って言われたら、ママ不思議がってた。バレたらどうしようって、緊張したよ」
「お。抜け出してきたこといい、意外と不良さんだったのね」
「だって昨日、ゴミ箱に筆箱捨てられて。どうしても学校行きたくなかったの」
「…それは、しょうがないね。それにしても、酷いことするな」
「でも明日の終業式は行く。いじめっ子に負けたくない。ちょっと怖いけど…がんばる」
強気に宣言する少女の横顔と眼帯に覆われていない目は凛々しくて、会った当初の弱気な姿はどこにも見えない。まだ猫背気味だが、真っ直ぐ前を見て歩いている。
徐々に足元が明るくなってきた。道の先の木と木を結ぶバツ印と、付近の木々の隙間から遊歩道も見えてくる。
「あのおばさん、いなくなってるといいなあ。さっき、ママと話しながらチラチラ見てきたの。朝学校行く時に道で会ったら、後ろで他のおばさん達とヒソヒソ話すし。なんでおばさん達って、あんなにお喋りが好きなんだろう」
「うんうん、あたしのお母さんも言ってた。パートのおばさん達は仕事中でもペラペラ喋り通しで、手は動かさないもんだからうんざりするって。噂話が大好きで、自分のことが話に上ったこともあるみたい。真面目に取り合わないで、聞き流すのが一番だって。気にするが負けみたいよ」
「…大人になりたくない」
「まあまあ、そうならないように気をつければいいんだよ」
将来を悲観する純粋な少女を宥めているうちに、ロープが目の前に迫ってきた。道を外れ、行きに通った木の隙間に向かう。しかし帰りは少女が後ろから押してくれたため、あっけなく通り抜けて遊歩道へ降り立った。
直後に遊歩道を通っていた人と目が合ったが、少し不思議そうな顔をしただけで歩き去っていった。右左と道を確認するも、帆高の姿は無い。広場に着いてるものと思って、追いかけて探しているかもしれない。
「え? どうして?」
「恋っていうのは思い通りになるものじゃないんだよ。漫画の中でも簡単にハッピーエンドにならないでしょ? 色々と困難があったり、すれ違って離れたり。現実も同じ。あたし達も、そうはできない難しい秘密の事情があるんでね」
少女が自分のことのように、肩を落とした。
「んと、ムズカシイヒミツノジジョウ? 無くなるといいね」
「ふふ、だといいんだけどね。…さて! そろそろ帰ろっか!!」
彼女の母親と同じく、電話が長引いていなければ帆高だって探している。帆高と別れてから、30分以上は経っている。
来た道を戻る。視力は良くなくとも少女は慣れたものでスタスタと歩き、珠結を気にかけてか少し先を進む。大きめの石がある、凸凹があると教えてくれ、非常にスムーズに進むことができた。
「そういえば、どうしてあたしに目の病気のことや学校のこと教えてくれたの? 話すの、嫌だったでしょ」
「なんとなく。おねえさんになら話してもいいかなって思ったの。わたしのこと『かわいそうじゃない』って言ってくれたのおねえさんが初めてで嬉しくて。だから、もっと聞いて欲しいなーって」
速度を緩めて珠結の横に並ぶと、少女は秘め事を囁いた。
「だからね、もう一つ話しちゃう。今日の学校ね、ママに頭が痛いって言って休んだの。でもそれ、嘘なんだ。病院に行って『どこも悪くない』って言われたら、ママ不思議がってた。バレたらどうしようって、緊張したよ」
「お。抜け出してきたこといい、意外と不良さんだったのね」
「だって昨日、ゴミ箱に筆箱捨てられて。どうしても学校行きたくなかったの」
「…それは、しょうがないね。それにしても、酷いことするな」
「でも明日の終業式は行く。いじめっ子に負けたくない。ちょっと怖いけど…がんばる」
強気に宣言する少女の横顔と眼帯に覆われていない目は凛々しくて、会った当初の弱気な姿はどこにも見えない。まだ猫背気味だが、真っ直ぐ前を見て歩いている。
徐々に足元が明るくなってきた。道の先の木と木を結ぶバツ印と、付近の木々の隙間から遊歩道も見えてくる。
「あのおばさん、いなくなってるといいなあ。さっき、ママと話しながらチラチラ見てきたの。朝学校行く時に道で会ったら、後ろで他のおばさん達とヒソヒソ話すし。なんでおばさん達って、あんなにお喋りが好きなんだろう」
「うんうん、あたしのお母さんも言ってた。パートのおばさん達は仕事中でもペラペラ喋り通しで、手は動かさないもんだからうんざりするって。噂話が大好きで、自分のことが話に上ったこともあるみたい。真面目に取り合わないで、聞き流すのが一番だって。気にするが負けみたいよ」
「…大人になりたくない」
「まあまあ、そうならないように気をつければいいんだよ」
将来を悲観する純粋な少女を宥めているうちに、ロープが目の前に迫ってきた。道を外れ、行きに通った木の隙間に向かう。しかし帰りは少女が後ろから押してくれたため、あっけなく通り抜けて遊歩道へ降り立った。
直後に遊歩道を通っていた人と目が合ったが、少し不思議そうな顔をしただけで歩き去っていった。右左と道を確認するも、帆高の姿は無い。広場に着いてるものと思って、追いかけて探しているかもしれない。