あたしが眠りにつく前に
「鍵、最初から開いてたのか?」
「うーうん? ふふふ。さて、なぜでしようか~?」
「は? ……どうせ珠結のことだ、何かろくでもないことでもしでかしたのか」
おや、よっぽど信用されていないらしい。まぁ、言うとおりなのかもしれないが。
今までは帆高が来るまでドアの前で待つしかなかった。以前に帆高が委員会で遅れることがあり、針金で開錠を試みたことがあった。しかし数分間の格闘の甲斐も無く、全然歯が立たなかった。
「えへへ、実はね…。じゃんっ!!」
珠結がスカートのポケットから取り出して見せ付けたのは、見た目からしてかなり新しいシルバーの小さな鍵。帆高は何となくそれに見覚えがあった。
「……は、何っで。生徒は持ち出し禁止じゃ…」
「いやさぁ。こっそり家の倉庫の鍵とすり替えて、スペア作ったの。先生達も普段滅多に使ってないみたいだったから、無事バレずに大成功! ね、すごくない!?」
意気揚々と話す珠結とは逆に、帆高の反応は頭を抱えての溜息一つと、テンションの低いもの。
「この悪知恵女」
呆れてこれ以上何も言えないとばかりの一言をぶつけ、見開かれていた帆高の目は今度はきゅっと細まった。
「賢女って呼んでくれない? いざという時、貸さないわよ」
「バカか、そんな時は一生来ない。それに珠結に情けをかけられるほど、俺は落ちぶれている覚えはこれっぽっちも無い」
「ひっど、何よその言い草!! そこまで言わなくてもいーでしょっ。ホントにその時が来ても知らないからね!」
軽くあかんべをしてから再び視線を運動場に戻すと、一人の生徒がチームメイトと思われる数人から肩に腕を回されて髪をグシャグシャとかき乱されていた。どうやらシュートを決めたらしい。彼は満面の笑顔で仲間達とハイタッチを交わしている。
それを傍観していた珠結も、つられて笑みを浮かべた。
「さっきから何見てんの?」
帆高はコーヒーを飲み干してから立ち上がると、珠結の右隣に移動してきて同様に見下ろす。
「あぁ、青春だな」
帆高はさほど興味なさげに呟く一方で、珠結は胸をギュッと押さえた。ズキリ、と痛む音はさすがに聞こえるはずがない。分かってはいるものの、珠結はフェンスに移動したのをやや後悔していた。
「うーうん? ふふふ。さて、なぜでしようか~?」
「は? ……どうせ珠結のことだ、何かろくでもないことでもしでかしたのか」
おや、よっぽど信用されていないらしい。まぁ、言うとおりなのかもしれないが。
今までは帆高が来るまでドアの前で待つしかなかった。以前に帆高が委員会で遅れることがあり、針金で開錠を試みたことがあった。しかし数分間の格闘の甲斐も無く、全然歯が立たなかった。
「えへへ、実はね…。じゃんっ!!」
珠結がスカートのポケットから取り出して見せ付けたのは、見た目からしてかなり新しいシルバーの小さな鍵。帆高は何となくそれに見覚えがあった。
「……は、何っで。生徒は持ち出し禁止じゃ…」
「いやさぁ。こっそり家の倉庫の鍵とすり替えて、スペア作ったの。先生達も普段滅多に使ってないみたいだったから、無事バレずに大成功! ね、すごくない!?」
意気揚々と話す珠結とは逆に、帆高の反応は頭を抱えての溜息一つと、テンションの低いもの。
「この悪知恵女」
呆れてこれ以上何も言えないとばかりの一言をぶつけ、見開かれていた帆高の目は今度はきゅっと細まった。
「賢女って呼んでくれない? いざという時、貸さないわよ」
「バカか、そんな時は一生来ない。それに珠結に情けをかけられるほど、俺は落ちぶれている覚えはこれっぽっちも無い」
「ひっど、何よその言い草!! そこまで言わなくてもいーでしょっ。ホントにその時が来ても知らないからね!」
軽くあかんべをしてから再び視線を運動場に戻すと、一人の生徒がチームメイトと思われる数人から肩に腕を回されて髪をグシャグシャとかき乱されていた。どうやらシュートを決めたらしい。彼は満面の笑顔で仲間達とハイタッチを交わしている。
それを傍観していた珠結も、つられて笑みを浮かべた。
「さっきから何見てんの?」
帆高はコーヒーを飲み干してから立ち上がると、珠結の右隣に移動してきて同様に見下ろす。
「あぁ、青春だな」
帆高はさほど興味なさげに呟く一方で、珠結は胸をギュッと押さえた。ズキリ、と痛む音はさすがに聞こえるはずがない。分かってはいるものの、珠結はフェンスに移動したのをやや後悔していた。