あたしが眠りにつく前に
珠結は首だけを動かして帆高の表情を窺うも、彼の興味の対象はすでに日々変わることのない町並みへと移っていた。自分が神経質になっていただけか。
真剣に見ているわけでも無さそうなのに、帆高は前を向いたまま視線に気付かない。帆高の横顔を眺めながら、珠結はイチゴオレに手を伸ばした。
帆高はフェンスにもたれ掛かり、今だけは目線はほぼ変わらない。しかし普通に立っている時は、見上げないと顔は見えない。
小学生の頃の背丈は互いにほとんど同じだったのに、中学生になるとあっという間に差がついた。
二人とも特に背が高いわけではない。それでもあと2、3センチで170に手が届く帆高は珠結より頭一つ分以上高い。しかも成長期が絶賛継続中であるから尚更その差は広まるばかりに違いない。
そういえば華奢だと思っていた体格も実はがっしりとしていて。水泳大会の時の水着姿を見たときはかなり驚かされた。着痩せするタイプであったという事実も、このとき初めて知った。
やっぱり男なんだよね。いい加減『貧弱』と呼ぶのはやめよう。
昔は異性であることなど気にならなかったが、やはりこんなにも違うものなのだ。
…ズズズッ パコッ
突然紙パックがひしゃげた。無意識のうちに飲みきってしまったのが口惜しい。
「そんな音出すなよ。ガキくさいな、珠結は」
帆高がやや視線を下げて、顔を向けてきた。
「もー! 小姑かっ。…ふふ」
珠結は頬を膨らませるも帆高は笑っている。だから、つい笑ってしまう。
「あー、真昼の屋上も悪くないな」
「意外と誰も来ないものなんだね。あ! 来る時はイチゴオレお願いね。あたし、しばらく来ることにするから」
「また奢らせる気か。よく飲めるな、そんな甘いの」
辛党の帆高は顔をしかめた。毎年2月に無理に渡されたチョコレートを見る時と同じ顔。男子達からしたら贅沢な悩みであり、女子達にとってはお気の毒な話。
クスクス笑う珠結に、帆高は怪訝な顔。それはますます笑いを増幅させた。
暖かい日だまりと爽やかな風。目の前の広い世界を眺めながらの甘いイチゴオレ。そして、帆高がいて。
なんて心地良い時間なんだろう。このひと時の中に永遠を求めてしまうあたしは、呆れるほどに愚かでしょうか…?
真剣に見ているわけでも無さそうなのに、帆高は前を向いたまま視線に気付かない。帆高の横顔を眺めながら、珠結はイチゴオレに手を伸ばした。
帆高はフェンスにもたれ掛かり、今だけは目線はほぼ変わらない。しかし普通に立っている時は、見上げないと顔は見えない。
小学生の頃の背丈は互いにほとんど同じだったのに、中学生になるとあっという間に差がついた。
二人とも特に背が高いわけではない。それでもあと2、3センチで170に手が届く帆高は珠結より頭一つ分以上高い。しかも成長期が絶賛継続中であるから尚更その差は広まるばかりに違いない。
そういえば華奢だと思っていた体格も実はがっしりとしていて。水泳大会の時の水着姿を見たときはかなり驚かされた。着痩せするタイプであったという事実も、このとき初めて知った。
やっぱり男なんだよね。いい加減『貧弱』と呼ぶのはやめよう。
昔は異性であることなど気にならなかったが、やはりこんなにも違うものなのだ。
…ズズズッ パコッ
突然紙パックがひしゃげた。無意識のうちに飲みきってしまったのが口惜しい。
「そんな音出すなよ。ガキくさいな、珠結は」
帆高がやや視線を下げて、顔を向けてきた。
「もー! 小姑かっ。…ふふ」
珠結は頬を膨らませるも帆高は笑っている。だから、つい笑ってしまう。
「あー、真昼の屋上も悪くないな」
「意外と誰も来ないものなんだね。あ! 来る時はイチゴオレお願いね。あたし、しばらく来ることにするから」
「また奢らせる気か。よく飲めるな、そんな甘いの」
辛党の帆高は顔をしかめた。毎年2月に無理に渡されたチョコレートを見る時と同じ顔。男子達からしたら贅沢な悩みであり、女子達にとってはお気の毒な話。
クスクス笑う珠結に、帆高は怪訝な顔。それはますます笑いを増幅させた。
暖かい日だまりと爽やかな風。目の前の広い世界を眺めながらの甘いイチゴオレ。そして、帆高がいて。
なんて心地良い時間なんだろう。このひと時の中に永遠を求めてしまうあたしは、呆れるほどに愚かでしょうか…?