あたしが眠りにつく前に
 ああ言えばこう言う。またいつものように、どこまで行っても平行線な会話の無限ループに突入しそうな気がしてきた。コホンと咳払い一つをして、強めの声色で切り返すことにしよう。

「いやいや、だからって考えすぎ。そんなので、どうしてさっきの発想に行き着くのよ。あいつせっかちな所あるから、さっさと用事を済ませたかったんでしょ。それかよっぽど暇で他にすることが無かったか。はい、疑問スッキリ解決。この話はもうおしまいっ。あと里紗、友達だから忠告しとく。眼科と脳外科行った方がいいよ。てか、行け」

「ご心配なく! 至ってノープロブレム!! 本日も健康なりっ。嫌味な言い方はともかく、お気遣いには感謝しとくよっ。そんで、珠結の反論は一切却下だし、納得する気ないからヨ・ロ・シ・ク」
 
 右手で適当に敬礼をし、里紗は左手で袋からポッキーを3本同時につまみ出す。それ、あたしのなんだけど。これはかなり拗ねていること間違い無しだ。

珠結は袋を里紗の方にさりげなく押し出す。自分で封を切っておきながら、3本目を食べる気はしなかったためもある。

食後でもデザートは別腹の法則のためか、里紗は袋を手中に収めて次々と胃の中に納めていく。

「機嫌直った?」

 最後の一本をくわえたのを見届けて尋ねてみるも、里紗はツーンとそっぽを向いた。

「ま~たやってんの?」

 すると呆れたように笑いながら、飲み物を買いに行っていた友人達が戻って来た。

「ちょーど良かった。2人からも言ってあげてよ、第三者からの説得ってやつで」

 2人はすっかり膨れた里紗を見ると、揃って肩を竦めた。

「りーさ。同中の私だから言うけどさ。この二人はホンっトに何にもないんだよ? まあ確かに昔から堂々と一緒に帰るわ、時々仲良くイチャイチャしてるわでかなり紛らわしいけど」

「そうそう、遠目から見たら恋人同士に見えなくも無いし。はあ、一之瀬君カッコイイから、珠結がたまに憎らしくなる。場所変われーって」

「あ、それ同感」

「ほら、やっぱ…」

「コラコラ。話が変な方に流れてる」

 里紗に最後まで物を言う間を与えず、珠結がすかさず割り込んだ。
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