あたしが眠りにつく前に
とはいえ、それでも。日本語には‘これはこれ、それはそれ’という、非常に便利な言葉が存在する。
「はぁ~あ、それにしたってお互い寂しい人間だよね。だって天下無敵ののクリスマスだよ? 1年のうちの最大のイベントって言っても過言じゃない記念日に、過ごす相手が腐れ縁の幼馴染って…」
「悪かったな。それよりも、外人のキリストの命日を何でここまで大々的に祝福するんだか。日本人の大部分は仏教人のくせに」
「いや、誰もそんなこと頭に入れてないから。単なるお祭り騒ぎで、要は楽しければいいってことでしょ。日本人の宗教観なんて、笑っちゃうほどフリーダムだし」
手持ち無沙汰にシャープペンシルをクルっと廻すも3回も回らず滑り落ちてしまう。帆高は珠結の筆箱から赤ペンを取り出すと、クルクルクルと廻し続けてみせる。後学のためにと、珠結は帆高の手を凝視する。
「…珠結は一緒に過ごしたいヤツでもいたのか?」
見事な指捌きを停止させ、帆高はやけに静かに呟く。珠結は目線を自分の手元に戻して再チャレンジするも、3回目で失敗してしまう。まだまだ上達への道のりは遠そうだ。
「まっさかあ、色恋とかでのそういう人はいないって。てか、彼氏とかも別に欲しくないし」
「ぶつくさ言っときながら、何だそれは」
「さっきのはあくまでノリだもん。季節柄そう思ってみたくなる、みたいな? じゃあ、帆高はどうなの? 彼女欲しい?」
「さあな」
「いらん」とバッサリ切り捨てるかと思いきや、意外や意外。帆高にも普通な男心というものをちゃんと持っていたようだ。
「ねぇ、デートのお誘いとかあった?」
「デートかはともかく、誘いは全部断った」
‘全部’と言うからには、一人二人どころのレベルではないだろう。さすが見た目だけは完璧なだけはある。陰で‘女泣かせ’と囁かれているのも納得できる。
「ちなみに帆高からは…」
「は? 珠結にプレゼント探しを誘っただろ。何変なことばかり聞いてんだ、バカ」
「はぁ~あ、それにしたってお互い寂しい人間だよね。だって天下無敵ののクリスマスだよ? 1年のうちの最大のイベントって言っても過言じゃない記念日に、過ごす相手が腐れ縁の幼馴染って…」
「悪かったな。それよりも、外人のキリストの命日を何でここまで大々的に祝福するんだか。日本人の大部分は仏教人のくせに」
「いや、誰もそんなこと頭に入れてないから。単なるお祭り騒ぎで、要は楽しければいいってことでしょ。日本人の宗教観なんて、笑っちゃうほどフリーダムだし」
手持ち無沙汰にシャープペンシルをクルっと廻すも3回も回らず滑り落ちてしまう。帆高は珠結の筆箱から赤ペンを取り出すと、クルクルクルと廻し続けてみせる。後学のためにと、珠結は帆高の手を凝視する。
「…珠結は一緒に過ごしたいヤツでもいたのか?」
見事な指捌きを停止させ、帆高はやけに静かに呟く。珠結は目線を自分の手元に戻して再チャレンジするも、3回目で失敗してしまう。まだまだ上達への道のりは遠そうだ。
「まっさかあ、色恋とかでのそういう人はいないって。てか、彼氏とかも別に欲しくないし」
「ぶつくさ言っときながら、何だそれは」
「さっきのはあくまでノリだもん。季節柄そう思ってみたくなる、みたいな? じゃあ、帆高はどうなの? 彼女欲しい?」
「さあな」
「いらん」とバッサリ切り捨てるかと思いきや、意外や意外。帆高にも普通な男心というものをちゃんと持っていたようだ。
「ねぇ、デートのお誘いとかあった?」
「デートかはともかく、誘いは全部断った」
‘全部’と言うからには、一人二人どころのレベルではないだろう。さすが見た目だけは完璧なだけはある。陰で‘女泣かせ’と囁かれているのも納得できる。
「ちなみに帆高からは…」
「は? 珠結にプレゼント探しを誘っただろ。何変なことばかり聞いてんだ、バカ」