あたしが眠りにつく前に
少し自覚していたので反論できない。でもまあ今の所、帆高に意中の人はいないようだ。
「ところで珠結は杉原達と過ごすと思ってた。彼氏と過ごすって?」
「ううん、元々は彼氏持ちの清ちゃん以外で近場で遊ぶつもりだったけど、せっかくの長期休みだから旅行しよう!ってことで、2泊の東京ツアーに変更。だから涙を飲んで辞退してきた」
「そうか」と一言、帆高は理由を聞かない。時・場所を選ばず睡魔が襲いかかり、最低7時前に就寝時刻を確立している身では旅行など不可能だ。帆高はそれが分かっている上で何も言わない。話させようとしない。
本当はものすごく行きたかった。地元とは桁外れに眩しいイルミネーションや人の多さに驚いたり、写真や画面でしか知らない東京タワーなどの色んな観光名所に行ってはしゃいだり、服やアクセサリーを限られた予算の中でどれを買うか真剣に悩んだり。
大好きな友人達との一瞬一瞬が欲しかった。それは言葉に言い表せないほど悔しくて切ない。
帆高の手が頭に伸びて軽くクシャッと乱す。自分は今どんな顔をしているのだろう、よほど落ち込んだ顔をしているのか。帆高も同じ顔をしているのなら、その方がもっと嫌だ。わざとそっけなく手を払いのけ、膨れっ面で髪を整えれば帆高は小さく微笑む。そこでやっと、珠結は心からの笑みを見せる。
「あたしのことより、帆高のほうが意外じゃない? 友達多いのに何で一人だったのよ」
「さっき言ったろ。誘いは全部断ったって。その中にクラスの連中からの遊びの誘いもあったんだけど、それが他校の女子達も一緒にってヤツで。当日に初めましてって顔合わせたところで、お互い気まずいだろうに。だから断って予定ゼロだったんだよ」
眉を顰める帆高とは違い、珠結には何となく事情が掴めていた。きっと黒幕はその他校生の女子連中。どうせクラスの男子の誰かから帆高の事を聞いたり写真を見たりして、引き合わせてほしいとの魂胆からだろう。
その代わりカワイイ子との合コンのセッティングを交換条件にして、甘い蜜を吸うつもりだっただろうが、奇しくも打ち砕かれた。「断った時、異様に縋り付かれた」と聞くからに、ほぼ間違いない。
「ところで珠結は杉原達と過ごすと思ってた。彼氏と過ごすって?」
「ううん、元々は彼氏持ちの清ちゃん以外で近場で遊ぶつもりだったけど、せっかくの長期休みだから旅行しよう!ってことで、2泊の東京ツアーに変更。だから涙を飲んで辞退してきた」
「そうか」と一言、帆高は理由を聞かない。時・場所を選ばず睡魔が襲いかかり、最低7時前に就寝時刻を確立している身では旅行など不可能だ。帆高はそれが分かっている上で何も言わない。話させようとしない。
本当はものすごく行きたかった。地元とは桁外れに眩しいイルミネーションや人の多さに驚いたり、写真や画面でしか知らない東京タワーなどの色んな観光名所に行ってはしゃいだり、服やアクセサリーを限られた予算の中でどれを買うか真剣に悩んだり。
大好きな友人達との一瞬一瞬が欲しかった。それは言葉に言い表せないほど悔しくて切ない。
帆高の手が頭に伸びて軽くクシャッと乱す。自分は今どんな顔をしているのだろう、よほど落ち込んだ顔をしているのか。帆高も同じ顔をしているのなら、その方がもっと嫌だ。わざとそっけなく手を払いのけ、膨れっ面で髪を整えれば帆高は小さく微笑む。そこでやっと、珠結は心からの笑みを見せる。
「あたしのことより、帆高のほうが意外じゃない? 友達多いのに何で一人だったのよ」
「さっき言ったろ。誘いは全部断ったって。その中にクラスの連中からの遊びの誘いもあったんだけど、それが他校の女子達も一緒にってヤツで。当日に初めましてって顔合わせたところで、お互い気まずいだろうに。だから断って予定ゼロだったんだよ」
眉を顰める帆高とは違い、珠結には何となく事情が掴めていた。きっと黒幕はその他校生の女子連中。どうせクラスの男子の誰かから帆高の事を聞いたり写真を見たりして、引き合わせてほしいとの魂胆からだろう。
その代わりカワイイ子との合コンのセッティングを交換条件にして、甘い蜜を吸うつもりだっただろうが、奇しくも打ち砕かれた。「断った時、異様に縋り付かれた」と聞くからに、ほぼ間違いない。