fall in labo〜恋する研究室〜
「この席、この前まで俺の席だったんだ。」

「そうなんですか。」


この前までカワサキが使っていた席をこれから私が使う。

たったそれだけのことなのに、なんだか嬉しかった。


「俺さ、3年でこの研究室に入ってからずっとこの席だったから、愛着わいちゃって。」


私は、コクンと頷く。

まだ、カワサキの話を聞いていたい。


「いつも窓から外ばっかり見てた。研究もしないで。」


いたずらっぽく笑うカワサキ。

この笑顔、好きだなぁ……、なんて、何考えてんだ私。


「でもさ、沢村はちゃんと勉強しろよ。」

「……は、はい。」


今、言ったよね?沢村って。

私のこと、呼んだよね?


「……どうかした?」

「いえ、頑張ります、研究。」


私、よっぽど変な顔してるんだろうな。

きっと、デレデレ……。


「面白いな、お前。」


そう言って、カワサキはまた八重歯を覗かせた。

名前呼ばれるのも嬉しいけど、その「お前」ってのも嬉しい!
< 10 / 55 >

この作品をシェア

pagetop