fall in labo〜恋する研究室〜
戻らなきゃよかった。

私はこのとき、はっきりと感じた。

何をかって?ミナミさんの敵意。

カワサキの肩に頭をのせて、


「酔っちゃった。」


って、あまーい声で言っている。

そんな2人を見て、動けないでいる私。


「どうしたの?座んないの?」


何でもないように言ってのけるカワサキが、私にとっては何よりも残酷だった。

せめて迷惑そうな顔でもしてくれたら、私は救われたのに。

私は無言のまま座った。


「沢村さん、お帰り。もう、大丈夫なの?」


頭を起こし私の方を向いてミナミさんが言う。

勝ち誇ったような笑み、敵意むき出しの視線。

絶対に酔ってないだろ、なんて言えないけど。


「もう……、大丈夫です。」


やっとの思いでそれだけ言うと、私は正面を向いた。

いろんな意味で、大丈夫ではなかった。

タチバナさんが机に突っ伏して寝てる。


「ごめんね。橘くん、弱いのよ。」

「そうなんですか。」


ぐっと涙をこらえて、ミナミさんの方を向かずに返事した。

ミナミさんを見ると、泣いてしまいそうだった。
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