fall in labo〜恋する研究室〜
実験について説明する姿も、お手本で操作してみせる姿も、今日はいくらでも見つめてていい。

こんなの、初めてだ。

初めて会ったときは、私はもう実験終わってたからな。

今日はしっかり拝んでおこう。

研究室が一緒でも、自分の実験で、じっと見ることはできないから。


「沢村、ビーカーとって。」

「はい。」

「ピヘット。」

「はい。」

「試験管。」

「はい。」


どんな些細なことでも、自分がカワサキの役に立ってるんだと思うと、嬉しかった。

この真剣な眼差しを、流れるような手つきを、たまに見える八重歯を、見るたびに私は思う。

この人のことが好きなんだ、って。

この気持ちには嘘も偽りもないんだ、って。

簡単には負けられないんだ、って。

たとえそれがミナミさんだとしても。

感情がストレートに表現できなくても。

私はカワサキが好き。
< 29 / 55 >

この作品をシェア

pagetop