fall in labo〜恋する研究室〜
強い風が吹き荒れる中、私は頭を冷やそうと思った。

カワサキは風邪ひいて、弱ってるだけ。

じゃないと、私なんか頼らないって。

誰でもいいんだよ、看病してくれれば。

でも。

それでも、今は私しかいないんだから、早く帰ってあげないと。

カワサキの部屋の前で大きく深呼吸をする。

そして私はチャイムを鳴らした。

中から反応はない。

もう一度。

今度は苦しそうな咳が聞こえた。

そっとドアノブに手をかけると、ドアはすんなり開いた。

鍵、かけてなかったんだ。


「先輩、沢村です。入りますよ?」


一応、声だけはかけとこう。

私は靴を脱ぐと、カワサキの家に上がった。

初めて入るカワサキの部屋はきれいに整頓されていた。

彼女がいるのかもしれない。

私ができることなんて、何もない。

また、悪い方にばかり考えてしまう。
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