fall in labo〜恋する研究室〜
『俺、だけど。誰かわかる?』


電話の向こうから届くクスクスと笑う声。

私にはすぐわかった。

いつも必死で聞いてた声だから。


「……先輩?」

『そ。』


まだ鼻声だけど、昨日より全然マシみたい。

今日は学校来なかったから、心配してたんだけど。


「元気になったみたいですね?」

『うん、大分ね。』

「よかったです。みんな、心配してましたよ。」


ミナミさんなんて実験が手に着かない感じで、何度も失敗してイライラしてた。


『昨日は……ありがとな。』

「いえ、そんな。迷惑じゃなかったなら。」

『おかゆも、おいしかった。』


もう、この一言で十分、嬉しすぎる。

顔がニヤけていくのがわかるけど、自分ではどうしようもない。


『明日は、学校にも行けそうだから。またな。』

「はいっ!」


声が裏返りそうなのを必死で押さえて、冷静を装って電話を切った。

たったそれだけのなのに、私のテンションは一気に上がった。

耳元で聞こえるカワサキの声、2人だけの会話、幸せだよ。
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