fall in labo〜恋する研究室〜
学校を出て、カワサキと2人並んで歩く。

でも、会話はない。

居心地の悪い沈黙が続く。

何でだろ?

こんなにすぐ近くにいるのに、違う世界にいるみたい。

私のことなんか、見えてないみたい。

歩調さえ合わせてくれなくて、ついて行くので精一杯。

……私は、カワサキの何なの?

そんなの決まってんじゃん、後輩。

ただの後輩。

それ以上でもそれ以下でもない。

わかってるでしょ、若菜。

長いこと考えて浮かんだ疑問の答えは、ずっと前から私の心の中にあったみたい。

こんなに好きなのに、どうして伝わらないのかな?

好きなだけで幸せだったはずなのに、私はどんどん欲張りになっていく。

会えただけで幸せだった。

話せただけで嬉しかった。

傍にいれるだけで笑顔になれた。

なのに、私は……。

もっと近づきたい。

もっと話したい。

もっと傍にいたい。

好きの気持ちは大きくなるばかりで。

私は欲張りだ。
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