fall in labo〜恋する研究室〜
「先輩。何で先輩は私のこと、呼び捨てなんですか?」

「……はっ?」


カワサキは目をまん丸に開いて私を見つめる。


「ミナミさんは南さんって呼ぶのに、どうして私は沢村なんですか?」

「そんなこと?じゃあ、何て呼べばいい?波多江みたいに、若菜ちゃんって――」


気がつくと、私はカワサキの頬を叩いていた。

カワサキはすごく驚いた顔で私を見ている。


「先輩は……、何もわかってないです。」


私がどんな思いでこんなこと言い出したのかも、私がこんなにカワサキが好きなことも。

何もわかってない。


「じゃあ、何でお前は俺の名前を呼ばないんだ?」

「……えっ?」

「シゲヤマさん、タチバナさん、ミナミさん。みんな先輩なのに、何で俺だけ先輩なんだ?」

「そんなの……。」


私の先輩は、カワサキ1人だけ。


「私にとって先輩は、先輩だけだから。だけど、先輩にとっては私なんて、たくさんいる後輩の中の1人なんでしょ?」


特別でも何でもないんでしょ?
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