KITUNE
「りん…」

コムラは泣きそうな顔で、わたしに近付き、額と額を合わせた。

…さっきのキムロの手のように、冷たい。

「ゴメン…」

「良いのよ。ズカズカと踏み込んできたのは、わたしが先なんだもの。気にしないで」

「うん…。でもありがとう」

その後。特に会話をしなかった。

ただ手をつないで、二人で山道を歩いていた。

別れ際。

「明日、ここで待っている」

「分かった。じゃ、明日は冷たいヨウカンでも持ってくるわ。ミトリとキムロによろしく」

「うん、じゃあね」

ふと歩き出した時、気付いた。

…体温が少し冷たいぐらいになっている。

特に額と首元、そして手が。

だからわたしは―彼等を恐ろしくはないと感じた。
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