KITUNE
わたしは桃を味わいながら、山で出会った三人のことが頭から離れなかった。

「ねえ、お祖母ちゃん」

「何だい?」

「お祖母ちゃんとお祖父ちゃんは、昔からここに住んでいるんだよね?」

「ああ、そうだよ。もう生まれてからずっとだね」

「じゃあ山のウワサ話みたいなこと、知ってる?」

「山? 山って、湖があるって話した山のことかい?」

「うん、そう。あそこにお社があったんだけど、手入れされていないみたいでさ。何かあの山にあるのかなって」

「山にお社がねぇ…」

麦茶を飲みながら、祖母はう~んとうなっていた。

「あっ、お社に関係あるかもしれないけど」

そう言って祖母は語りだした。

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