KITUNE
「…まあ随分昔のことだけど、私がまだ10にも満たない頃だったかねぇ。あの山のお祭りに参加した覚えがあるよ」

「お祭り?」

「部屋の中から、祭囃子が聞こえてきたの。だから夜だったけど、思わず家から飛び出て山に入ったの」

「けっ結構行動派なんだね」

「昔はね、それこそ若かったもの」

祖母は軽く笑った後、ふと遠い眼をした。

「そこではね、動物のお面を付けた人が参加していたわ」

「お面?」

ふと、コムラのお面が浮かんだ。

「そう。動物のお面。私は持っていなかったから、最後までお祭りにいられなかったんだけどね」

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