KITUNE
「お前さん、私等の正体を知っておるな。なのに何故あえて近付く? それがどんなに酷なことか、分かっておるのか?」

…言われたか。

わたしは苦笑して、草原に座った。

「…分かってる。わたしは人間だし、いつかはみんなより先に歳をとって消えゆく存在。だけど今この時は今しかないから」

今を後悔したくない―。その気持ちはコムラも同じだと、思いたい。

「…難儀なことよの。お前さんの優しさが我等を縛り付け、苦しめる。だがその分、幸福もあるのだな」

ミオは視線を下に向ける。

…きっと彼女は彼女なりに、いろいろあったのだろう。

だから忠告とも言える助言をしてくれる。

「…ありがとね、ミオ」
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