まもりねこ。

 市場へ向かう途中、当たり障りの無い会話をしていたがどことなくギクシャクしてしまった。


 沈黙になったかと思えばお互いが同時に話し出したり、どこかよそよそしい雰囲気なのがディルクにはすぐに分かった。


 ――だが、あえて聞くような事はしなかった。


「なんでもないよ」とネムが言うのが目に見えているからだ。


 お婆ちゃんの家から市場までは歩いて15分もかからないのに、凄く長い時間歩いているような気がした。


 市場で買うものを頭で考えたり、ディルクとお喋りしていればいつもはすぐに着いてしまうのに今日はなんだか時間がゆっくり流れている気持ちになってしまう。


「おーい! こっちこっちー!」


 アリーセの声が聞こえ、姿を見付けた瞬間、ネムはほっとしている自分にビックリした。



 いつもなら陽汰に人間の事や地球の事を聞いたり、陽汰自身の生活や家族のこと、どんな物を食べたりしてるかなど沢山話したいと思っているのに。




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