まもりねこ。

 ネムはマントについたたんぽぽの綿毛を軽く払い、ホウキにまたがり勢いよく地面を蹴飛ばした。


「んーっ気持ちいい!!」


 その声を合図にしたのか、マントの中からディルクが出てきた。


 ディルクは真っ白い毛の猫で、ネムの守り猫である。


 ――赤子が産まれし時、同日同時刻に産まれた猫を与えよ。猫は赤子を守り、共に成長するであろう――


 つまりディルクとネムは同じ日、それも同じ時間に産まれた者どうしなのだ。


「そうだな。しかし東の空からイヤなニオイがするのだが」

「もぉー! せっかくいい気分なのにそういう事言わないで!」

「……すまん。今日も市場へ行くのか?」


「そ! だって賑やかだし、ウチにいてもつまらないの」


 ネムの近所にはなぜか同年代の子供がいないのだ。

 母親に聞いてみても言葉を濁すばかりなので物心ついたときには諦めていた。





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