まもりねこ。

『この先 東の森』


 この森の中にある泉のそばにエレンお婆ちゃんが住んでいる。

 昔は一緒に住んでいたのだが、ダフィーお爺ちゃんが亡くなってからはずっとこの森に住んでいる。

 さびしくないかと前にネムが尋ねたが、泉のエルフたちが遊びに来てくれるから平気よ、とエレンお婆ちゃんは言っていた。


 ネムはお婆ちゃんが大好きだ。


 過去の話や、お爺ちゃんの話、それに世界の話……色々お話してくれるからである。


 ――でも、ネムが毎回聞きたがるのは人間の話だった。



「ディルク。変だと思わない?」


 急にネムが喋りだしたため、不意をつかれたディルクは答えられなかった。


「なんていうか……泉のエルフ達が一人もいないのよ」


「それどころか森のエルフさえもおらぬようだ」


 ディルクは答えながら東の空のにおいを嗅いでいる。


 不審に思ったネムは小走りでエレンお婆ちゃんの家へ急いだ。





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