無人島
「あ、テツヤくん。今どこ?」

テツヤ・・・くん?

まだ君付けなんだ。

なんか、いいな。

「そうなんだ。実はさ、車の当てがなくなっちゃって、海まで自力でいかないといけなくなったのよ。うん、そう。・・・じゃ、そうしようか。うん、わかった。そしたら後でね。」

これが彼氏と彼女の会話ってもんなんだろうか。

あまりにも穏やかな会話に、驚きとショックを隠せなかった。

「テツヤくん、今ちょうど駅についたとこだって。だから、駅で待っててもらって、私たちと合流して海まで行くことになったよ。」

「そう。オッケー。テツヤくん、怒ってなかった?」

「全然。温厚そのものの人間だから。ほんと、ムーミンって呼びたいくらい。」

「そっか、ほんとごめんね。じゃ、私たちもいこっか。」

「うん。」

ムーミンか。

見た目は全然ムーミンじゃないんだけどね。

一度だけ会ったことあるけど、物静かで知的で、男前。

うちのケントとは雲泥の差。
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