無人島
「俺の伯父が、ボート持ってんだ。」

「ふうん。」

「そのボート貸してくれるらしくて、海まで運んでくれるって。」

「ボートって、どんなボートよ。」

「普通のボートだよ。ほら、池とかでカップルが向かい合ってオールで漕ぐやつ。」

「は?そんなボート、海なんかに出して大丈夫なわけ?」

「だから面白いんじゃん。」

また始まった。

先の見越せない、思いつき人間。

「どう面白いわけ?海に出て、転覆しておぼれるのが楽しい?」

「まっさか。救命胴着も貸してもらえてるし、そんな沖までいくつもりないよ。」

「で、何がおもしろいわけ?」

私もしつこいな、と思いつつ。

「ボートで海だぜ?揺れまくって楽しいぞ。そんじょそこらの遊園地に負けないくらいの乗り物になるって、絶対。」

「・・・。」

あまりに子どもっぽい発想に口をつぐむ。


< 3 / 30 >

この作品をシェア

pagetop