月と太陽Ⅲ



あの子があんな魔物を?


エセルは目の前に広がる現実に目を疑った。


動揺を隠しきれない四人にアイナは高らかに笑った。


「久しぶり、お兄ちゃん。本当に久しぶりなのに残念だわ。もう会えなくなってしまうなんて…」


わざとらしく悲しそうにレオルを見つめた。


「だって私があなたたちを殺してしまうから」


ぞっとするような笑みを漏らすとアイナは冷酷に言い放った。


それを合図に今までゆっくりと辺りを旋回していたベーチスが急にこちらに向かって急降下してきた。


「くっ」


四人はすぐに反応して、脇に逸れた。


ベーチスが四人がいた場所の草をかする。


危機一髪、避けたため傷を付けることはなかった。


悔しそうに鳴くベーチスの嘴(くちばし)を見て、エセルはぞっとした。


あんなのに捕らえられたら、一溜まりもない。
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