月と太陽Ⅲ



意外にも沈黙を破ったのはレオルだった。


無理をしたような、そんな微笑みだ。


そんな顔を見た三人はかける言葉が見つからず、ただ静かに頷くしかなかった。


「そんなに気を使わなくてもいい。あいつが生きていてくれたのは嬉しかった。しかし、敵になってあいつは私の前に現れた。それなら例え兄弟であっても……」


―――それでいいの?


エセルは言葉をぐっとこらえた。


レオルが言いたくて言った言葉でないのは分かっている。


決死の覚悟で言った事だという事も分かっている。


けれど、こんな事があっていいのだろうか。愛する人を討たなくてはいけない痛み……


――これが戦争か。


エセルは拳を強く握った。歯を食いしばる。
< 66 / 88 >

この作品をシェア

pagetop