秘密な基地
「なあ、タケシ君、
 うち来なよ。」

「うん、あそこでしょ。」

タケシが指差すと、

「ええ、何で知ってんのっ?
 ほんと君って気味悪いよ。」

何せその場所は、
よく遊びに行く、
タケシの祖父の家なのです。
しかし、現代と建物は
違っていました。
タケシは祖母に
聞かされていた事を
思い出しました。
一度、火事になって
建て替えた事がある事を。
だからこの建物は、
まだ火事になる前の
建物なのだと察しました。
周りは畑ばかりで、
三十年後は、この辺りも
建物でひしめき
合うのですから、
信じられません。

 タケシの祖母カズコは
外に出ていました。
庭の枯れ葉を
掃除していたようで、
それと共に、
家にある不要な雑誌や
ゴミも一緒に
燃やしていました。

「あら、見かけない子ね、
 こんにちは。」

「うわっ、若い。」

祖母と言っても、
三十年前の、
少年ノブオの母親です。
その若さについ、
声に出してしまいました。

「はは、ちょっと
 変わってるでしょ、
 タケシ君っていうんだ、
 二階で遊ぶね。」

ノブオは、タケシの
手を引っ張り、
その場を過ぎようとすると、
背後から大きな声が響きました。

「ああーっ、母さん、
 オレの絨毯、
 燃やさんでくれーっ。」

ノブオの父、ゴロウが
走ってやって来ました。
タケシにとっては、
三十年前の祖夫の姿です。
また、その若さに
声が出そうになりましたが、
今度は何とか押さえました。
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