秘密な基地
未来へ
タケシの手紙を
持つ手は震え、
涙が止まりませんでした。
悔しくてたまらなかったのです。
やはり父さんには
生きていて欲しかったから…。

「くそーっ、何でだよー、
 何で死ぬのを知ってて、
 消防士になったんだよーっ、
 僕は、何の為に
 三十年前に行ったんだよーっ。」

この日、どれ程の涙を
流したでしょうか。

 その日の夕方、
ある親子が訪ねて来ました。

「タケシッ、あなたにも
 挨拶したいっ言うから、
 降りて来なさいっ。」

ユウコに呼ばれ、
タケシは涙を拭い部屋を出ました。
居間には、
五才の女の子と、
その両親がおり、
タケシが来るなり、
両親が頭を深々と頭を下げました。
父親が一歩前に出ると、
また頭を下げ、

「タケシ君、お父さんが
 こんな事になってしまって、
 本当に申し訳ない
 気持ちでいっぱいです。
 タケシ君、どうか許して下さい。」

タケシは、父親の切なそうな
顔を見てはいられず、
気丈にも、笑顔を見せました。

「気にしないで下さい。
 これは、父さんが選んだ道ですから。
 父さんもあの世で、
 お子さん助かって喜んでいますよ。」

その言葉に、
母親は泣き崩れながらも、
タケシに言いました。
< 27 / 29 >

この作品をシェア

pagetop