秘密な基地
「タケシ君のお父さんが
 あの時、火の中に
 飛び込まなかったら、
 娘は助かっていなかったんです。
 本当にありがとうございました。」

女の子も前に出ると、
ちょこんとお辞儀しました。

「ありがとーございましたっ。」

タケシは、ニコリと
ほほ笑みかけ、
女の子の頭を撫でました。

 タケシは、その日から、
もう父さんを亡くした悲しみで、
涙を見せる事は
二度とありませんでした。

 これで良かったのだと
思うようになっていたからです。
タケシが過去に行かなかったら、
今のタケシの存在も
無かったのかもしれません。
なぜなら、タケシの
祖父母の家が火事になった時、
家族全員死んでいたかも
しれないからです。
タケシが、いち早く、
皆を起こしに行けたからこそ、
無事に逃げる事ができたのです。

 そして、三十年前での
タケシがノブオに言った、
消防士になるな、
という言葉、これを受け入れ、
ノブオが消防士にならなかったら、
ノブオがこれまで、
数々の火事場で人々を
救って来た人達が、
もしかしたら、助からなく
なってしまっていたかもしれません。
そして、先日訪ねてきた、
あの女の子も
助かってはいなかったでしょう。

「多くの人々を救う為に、
 あの絨毯は、
 僕を三十年前に
 連れて行ったんだな。」

そのタケシの考えに
間違いはないでしょう。
 
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