秘密な基地
一週間が過ぎました。
この日は、授業参観の日です。
母ユウコが来てくれましたが、
タケシは、どこかで
父さんが作文を聞いているに
違いない、そう信じていました。
「斎藤 タケシ君。」
いよいよ、タケシが
作文を読み上げる番が
やってきました。
クシャクシャになった
原稿用紙を両手に持ち
広げました。
結局、丸めて部屋の片隅に
投げ捨てた作文は、
そのまま修正するわけでもなく、
タケシの手元に戻ったわけです。
「僕の将来の夢はっ…。」
声を大きく張り上げました。
父さんがどこにいても
聞こえるように。
「父さんのような
消防士になる事です。
自分の命をかえりみず、
人々を火事から救う、
父さんのような消防士になる事です。
父さんは本当に英雄です。
僕の誇りです。」
聞こえてる?父さん。