【奏】たらればの時間

「…タクの事だろ?」




ヨウイチはいつもそうだった

相手をよく見てる証拠なのかな

全部言わなくても
伝わってる事が多々あって
仲間内でも凄いなって話になってた


私がタクかカズか悩んだ時
カズが言ってくれた事
今でも覚えてる…



【俺にとってはミサキもタクも友達で
それはこの先、何があっても変わらない

だから、どっちが悪いとかも言わないし
そういう問題でもないだろ

周りがとやかく言う事じゃねぇ

だから
ミサキの想うようにしたらいいと思う】



そう言ってくれたんだよね…



私とタクを会わせてくれたのもヨウイチで…


ヨウイチには
責められても仕方ないって思ってた



それでも、一度も責められなかった




「…ん」



控え目に返事をした



あの時、カズを選んだ日から
カズが嫌がるから、ヨウイチとも
前ほど親密じゃなくなって
何よりタクの事を聞くなんて出来なかった


聞いてはいけない事だって…


何より聞く資格なんてないって…



「元気にしてるよ

仕事も頑張ってるしな」




それを聞いて安心した反面

そうじゃなくて…って思う自分もいる



「そう…」




「ふっ…納得出来ないって感じだな」




そう言いながらヨウイチは
ビールを勢いよく含んだ





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