【奏】たらればの時間

ベッドに深く身体を沈めると
夢の世界へと誘われる


「ん…ぅー…」


寝たばかりのはずなのに
…身体は軽い


起きてすぐに周りを見渡し
ホッと一息ついた…



願いが…叶った



ガチャッ



控えめに開かれたドアから
こちらを伺うように顔を覗かせたのは…タク




「…起こした?」




「ううん…さっき起きた」




にっこりと微笑む変わらないタク




「飯…どうする?」




タクの問いかけに部屋を見渡すと
時計はお昼をとっくに過ぎてて…




「…ごめんね」



お腹空いてるよね…



申し訳なく思うのに
そんな事、感じさせないようなタクの笑顔



「出前でも取るか?」




「…うん」




つられて笑顔になっちゃう




そう、タクといると
優しさを感じられて、笑顔になれたんだ




なのに…いつからなのかな?



そんなタクの優しさが物足りなくなった



もっと強引に捕まえて欲しいのに・・・って…




優しさだけじゃ…




「何、食べる?」



タクの声でハッと我に返った




「タクは何が食べたい?」




「ん?俺はミサキが食べたいのでいいよ」




そう…いつもそうだった…



これもタクの優しさ




「私はタクの食べたい物が知りたいな…」




「ん~…」



出前のメニューを広げ
その中の一枚を取ったタク



「…俺はカツ丼…って気分だけど…
ミサキは何がいい?」



タクが持ったメニューを
タクに寄り添い眺めた



「…海老天丼」



「ミサキはエビが好きだもんな
わかった」



そう言ってタクは笑った





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