【奏】たらればの時間
待っている間にテレビを眺めていると
流れているワイドショーに懐かしく思う


現実じゃないような…



でも、隣で手を握ってくれるタクの手は
確かに温かくて…



もう一度…そう思ったのに
戸惑っている自分もいて…



確かめたくてタクの手を握り返した




視線をあげると、満足そうに微笑むタク



  ………トクンッ…



大きな目を細めて笑うタクが好きだった




だから…その笑顔に胸が高鳴った




頼んだ出前が届いても
お腹が空いてるはずなのに
半分も食べれずに
残りは全部タクが食べてくれた




「どっか行くか?」



その問いかけに頷くと
私にコートを取ってくれて
タクはジャケットを羽織り
当たり前のように手を繋いで外に出た



外はすっかり冬で肌寒くて…




「寒くないか?」



「うん」




いつもそうやって聞いてくれてたね…



やっぱり現実感が沸かなくて…



それでも、他愛のない会話をしながら
公園を歩いたり
フラッと立ち寄ったゲーセンでプリクラを撮ったり
そんな時間が楽しくて…

これが夢なのか、現実なのか
考える事すら忘れてた



「…この後どうする?」



戸惑いがちに問いかけられた言葉に
2人同時に立ち止まった…




一緒にいたいけど…

何だか…ダメな気がする…



…何だろ?


この感覚…



答えられずにいると
タクが口を開いた



「…送ってく」



「……うん」



一緒にいちゃダメな気がするのに

一緒にいようって言ってもらいたい…



どうして言ってくれないのかな…?



いつもそうだった…


私が答えに詰まると
送って行くって言うんだよね



タクはもう少し一緒にいたいって思わないのかな?



それとも…私に気を遣いすぎて疲れたの?



わかんない…わかんないや…





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