時空戦争─我等世界ノ救世主!?─
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放課後、俺は屋上に向かった。
これは飽く迄予想でしか無かったが、あそこは絶好のサボリポイントだ。
夜統が居るかもしれない。
取り敢えず壊滅的な数学を重点的に教えてもらわなければ、追試からは逃れられそうに無い。
藁にも縋る思いというのはこの事だ。たぶん。
埃臭い階段を上り、錆付いてギシギシと嫌な音を立てるドアを開けると、閉鎖的な学校から一気に別世界へ飛び出したような、不思議な解放感が俺を包んだ。
案の定、彼は居た。
コンクリートの床に寝そべり、カバンを枕の代わり、ブレザーをタオルケットか何かの代わりにして体に掛け、チョコチップクッキーの箱を散らかして、何やら本を読んでいた。
「夜統」
俺が声を掛けると、それまで俺の存在など知らなかったのか、眼球だけをキョロリと俺の方に向けた。
夜統は文庫本から目を離し、起き上がると思い出したように呟いた。
「あぁ、あン時の…」
呟いた、と言うよりは、発した、の方が正しい表現かもしれない。
ただ、彼の口調は余りにも機械的だった。