あまーいお時間
自転車で10分程度
走ると、すぐある本屋さん。
そんな大きいわけでもないが
いろんな本が置いてあり
学生から大人まで
いろんな世代の人が
足を運んでいる。

本屋さんに着き
すぐ店内に入った。

奥に進めば進むほど
難しい本が並んでいる。
よくわからない本が
並んでいて、自分が
何しにきたのか
忘れてしまうほど凄い。

「そこのお嬢さん
何かお探しかい?」

私より少し低い
おじいさんが
話し掛けてくる。
この本屋さんの持ち主だ。

「あの‥受験生が
読むような参考書を
探してるんです」

「そうかい、そうかい。
はてなぁ‥おーい、
バイトのあんちゃーん
参考書とってきて
くれないかーい?」

「わかりましたーっ」

おじいさんが動けば
いいのに。
偉いなぁ、バイトの人。

‥って、あの声。
忘れるわけがない。
あの低く通った
甘い甘い、あの声。
私を一瞬で酔わせる
あの声‥。

「はい、これでいいかな‥
って―‥凜ちゃん?!」

やっぱり、そうだ。

「ゆ‥うきさ‥ん?」

悠希さん‥。

「偶然だねー
俺ね、ずっとここで
バイトしてんのー」

「そ、そうなんですか」

まともに顔が見れない。
きっと今、顔が赤い。
自分でも分かるほど
体が熱い。

「‥ねぇ」

「はい‥?」

「こっち向きなよ
凜ちゃん」

どうしてあなたは
そうやって私を
酔わせるのでしょう。

「む、無理‥ですっ」

「凜‥」

彼の両手に頬を挟まれ
くいって上にあげられる。
触られてるところが
徐々に熱くなっていく。

「やめてくださ‥いっ」

「やっべ。かわいい‥」

「んー‥っ」

目を背けようとしても
背けられない。
彼の瞳が私を捉える。

「凜ちゃん‥
顔真っ赤。
熱いよ~?」

「や、やめて‥くださ‥い
ゆうき‥さん‥っ」

「ごめんごめん
じゃあ参考書ねっ
ちゃんと勉強すんだぞ?」

「は、‥いっ」

お金を払って
すぐさま本屋を出る。

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