恋の唄
「そろそろ花火始まるんじゃない?」
華原君に声を掛けると、彼は「じゃあ移動するか」と言った。
どうやら穴場を知ってるらしくて、華原君に案内されるがままついていくと……
少し離れたマンションの屋上に辿り着いた。
人はいない。
「ね、ねぇ、入って大丈夫なの?」
不安を口にすると華原君はニッと笑う。
「去年もここで部の奴らと見たから大丈夫だって」
いや、それはたまたま見つからなかっただけなんじゃ……
「ほら、こっち」
手招きをして私を呼ぶ華原君。
見つかったらきちんと謝らないとな、なんて思いながら屋上の端にある手すりに近づいた。
私たちの距離はいつもの距離。