恋の唄


「意味……わかんないよ」


ウソ。
本当は知ってる。

華原君は、少しずつ伝えてきてくれてたから。

だけど私は、今の状態のままで華原君の気持ちに応えてはいけない。

どんなに嬉しくても、それを望んでも……


華原君に一花さんがいる以上は、私は気持ちを伝えられないから。

伝えては、いけない。


「華原君ってば、いつも変な事ばっか──」

「気付いてんだろっ」


声を荒げた華原君に、私の肩がビクッと震える。


「華原君……何言って──」

「お前が好きだって言ってんだよ!」


花火の音で聞こえなければどんなに良かっただろう。

聞こえなければ、こんな張り裂けそうな気持ちを持たなかった。


涙を……

流すこともなかった。



< 110 / 204 >

この作品をシェア

pagetop