恋の唄
ざわざわとしたクラスメイトの声が行き交う教室内。
誰かが誰かに『わー、また隣りじゃん』とか言ってるのが遠くに聞こえた気がしたけど、まともに耳には入って来なかった。
それは、私の視界に映っている人物のせい。
早々と自分の席を見つけていたのであろう彼、華原君は、ダルそうな表情でポケットに手を突っ込んで座っていた。
これからしばらく私がお世話になる……席の隣に。
私が苦手だと思っている華原君が私の隣の席になったのだ。
一瞬ストップしかけた思考だったけど、止まらずにすんだのは華原君のおかげだった。
彼は荷物を持ったまま立ち尽くしている私の姿を見るなり、声を発した。
「何ボケッとしてんだ?」
「へっ? あ、えっと、席……そこで」
何とか返答して華原君の隣の席を指差した。