恋の唄


「い、いないよ」


なんとか答えると、すかさず華原君は唇を動かした。


「じゃ、好きな奴は?」


質問攻め。
しかも答えにくい質問までされてしまった。


「えっと、それは……」


華原君だよって言いたい。
だけど……怖い。

伝えた未来に幸福が待ってるとは限らないでしょう?

ハッピーエンドばかりが恋の結末じゃないって事くらい知ってる。

叶わなかった結末を想像すると、怖くて、苦しくて……


私にはまだ、傷つく準備が出来てないと悟る。


『3・2・1……』


カウントダウンが聞こえてくる。

なのに、華原君は私から視線を反らそうとしない。

カシャッとシャッターが切られた音がして、私は答えた。




< 45 / 204 >

この作品をシェア

pagetop